ウェービング方法

移動速度や距離に応じたウェービングの方法について解説します。
1.魚に学ぶ3種類の動き
 海洋哺乳類であるイルカやシャチ、また魚類のマグロや鯉等を観察すると、その泳ぎ方は幾つかの方法があること に気づかされます。 スタート時の挙動、回遊時の動き、突進時の動きの3種類です。

① スタート時   : 静止状態或いはグライド速度からスピードを上げる際の代表的な挙動です。
            頭を振り、これに下半身が反作用で撓みが生じウェービングを開始します。
            水中をウェービングで移動する時の最初のきっかけとなります。
            魚であれば、体幹の側帯の普通筋を瞬間的に収縮させて頭を左右どちらかに振って
            います。 イルカやシャチは同じく上部の腹筋又は背筋を収縮させています。
            この時には下半身の挙動がなめらかで力が抜けている感じがします。
      
② 回遊時     : ゆったりとした回遊速度を維持する際の動きです。
            ウエービングが基本となります。
            体幹の筋肉、マグロなどでは血合筋の部分を収縮させており、酸素消費が抑えられて
            長距離のマラソン状態になっています。 移動のエネルギー効率が良い状態です。
            体幹筋の収縮でウェービングを行い、これにある程度の力で尾びれを振っています。

③ 突進時     : 捕食時や逃げる時等の短時間で高速で移動する際の動きです。
            直線的な移動が基本となります。 
            普通筋によって下半身は激しく高い振動で振られます
            上半身は、振動率が高いが故に慣性重量によって直進性が維持されます。
            加えて魚類は背びれ、イルカやシャチは胸鰭による横方向の抵抗により、上半身を
            安定させています。

以上の3種類の動きが、彼らの水中移動の基本と考えられます。
人がMammal Wingという前ビレを持った際には、この3種類の動きの選択枝があります。

① ボード先行型: 腕の力でウィングボードを押し込み、これをウェービングのスタートとし、ボードの
          上下動によるウエーブに下半身がついてゆくイメージ。 太ももから下は脱力している。

② 体幹筋中心型: 腕の力、胸の力、体幹筋を中心に太ももの筋肉のサポートを少し貰いながら、体全体の
          筋肉を上手に連携させて、腕、溝内、腰、膝を順次にウェービングさせる。

③ 直線移動型:  上半身は固定し、ボードは水平に構え、これを上下の抵抗として直進性を高め、
          フィンを高速で振動させる。

これらの動きによってスピードがどう変わるかについて実際にテストをした結果が下記のデータです。
このデータは、ウェーブの大きさと速度の関係を調べたものです。
ボードを持たないドルフィンキックのデータ(BX)が4㎞/h なのに対して、ボードで脱力した大きなウェービングをした速度(BB)は10%アップとなっています。 更にウェーブを中程度にして体幹筋を有効利用してゆくと(BM)5.3km/hと33%スピードがアップします。 ウェーブを小さくしてビートを高めると(BS)更に早くなり、ボードを水平固定翼として上半身を固めて下半身だけをウェービングさせた時(BN)が5.8㎞/h , 細かいウェーブでダッシュした場合(BSD)は6.4㎞/hと60%もスピードがアップしました。
勿論、直進性優先の場合は普通筋である太ももをメインとしており、速度が高くなれば酸素消費量も大きくなります。 水中をゆったりと移動するには、体幹をメインとしたウェービングの移動がとても有効です。


2. 一般的なウィングボードでのウェービング方法
 次に実際の動きについて解説します。 動きは各部位の筋肉の使う割合いによって変わります。求める移動速度やキックスピードによってもボードの迎角が変わりますが、ここではあくまで基本的な動きを図解してみました。
先ず、フィンを前に蹴り出す動き(ダウンスイングと呼びます)について解説します。 
上記の図4-Aは側面から見た動きを単純化したものですが、注目すべきは、頭は基本的に上下動せずに、胴体も軽いウェーブを描きながらも基本的には進行方向に対してまっすぐであり、ボードを持った手首を下に押し込む移動と、フットフィンが下がる移動が拮抗している点です。これが魚やイルカの回遊速度の動きの人への再現モーションとなります。

さて、ここでウイングボードを迎角を加えて押し込む事による反作用を、フットフィンのしなりという結果で補っているのか? 或いはフットフィンを蹴りこむ反作用で上半身のウイングボードが下がるのかという疑問点ですが、どちらが先行しても、結果的にはほぼ同時になります。
主願としては体幹によるウェービングを優先して酸素消費を節約しようとする訳ですから、ウイングボードで作られたウェーブラインに体節を合わせて腕、胸の筋肉、腹筋、太ももの筋肉を順次軽い力で使ってゆくというのが、最も効率が良い動きであるといえます。 次に反対の後ろへ反る動きを図解します。
図4-Bはウェーブのボトムから上に向かう反りの運動です。一般的にドルフィンキックでは、後ろへの反りによる推進は積極的に行わないものですが、ウイングボードを持つことにより、腕を上げる力でボードの推進力を発生させ、同時に背筋と太ももの後ろの筋肉を収縮させて踝を持ち上げ、フィンをしならせる事を意識することで推進力を生み出すことが出来、切れ目のない一定速度での移動が可能となります。
勿論ゆっくりとしたい時は、体が直線となる位置でグラインディングすることも良いと思います。

以上が、基本的な動きです。
小さなウエービングやストレートの動きは、また別のアクションが求められ、特に胸郭を柔軟にした動きが有効となります。
ママルデザインのパートナースクールでは、レクリエーションとしてのウェービングの動きの学習や、フリーダイビングのトレーニングの為のメソッドを学ぶことが出来ます。 是非水中で実際に体験してみてください。